【思い込みのからくり】第4回:こうあるべき、が心を苦しくする

【思い込みのからくり】第4回:こうあるべき、が心を苦しくする
「こうあるべき」と思っていませんか
「ちゃんとしなければ」
「もっと頑張らなければ」
「大人なら、これくらいできて当然」
「人に迷惑をかけてはいけない」
「一度決めたことは、最後まで続けるべき」
そんなふうに、自分に言い聞かせていませんか。
私たちは、日々の生活の中で、たくさんの「こうするべき」を持っています。
仕事では責任を果たすべき。
家族には優しくあるべき。
人から頼まれたら応えるべき。
失敗したら反省するべき。
つらくても、簡単に弱音を吐くべきではない。
こうした考えは、一見すると真面目で、立派なものに見えます。
実際、「こうするべき」という基準があるからこそ、責任を持って行動できることもあります。
では、そもそも「べき」とは、何なのでしょう。
「べき」とは、自分の中にあるルール
ここでいう「べき」とは、
「こうするのが正しい」
「こうするのが当然」
「こうあるのが望ましい」
と、自分や他人に対して課している、心の中のルールのことです。
例えば、
「仕事は最後まで責任を持つべき」
「人には親切にするべき」
「親孝行するべき」
「失敗してはいけない」
「人に迷惑をかけてはいけない」
などです。
これらは、単なる希望とは少し違います。
「できたらいいな」ではなく、
「そうしなければならない」
「そうできないのはよくない」
という感覚が強くなったとき、「べき」というルールになっていきます。
そして、このルールを守れなかったときに、
「自分はダメだ」
「もっと頑張らなければ」
「こんなことではいけない」
と、自分を責めることがあります。
つまり「べき」は、行動を決める基準になるだけでなく、自分を評価する基準にもなっているのです。
「普通」が、自分の中で「べき」になる
第3回では、「普通」という言葉について考えました。
「普通はこうするもの」
「みんな、そうしている」
「こうするのが当たり前」
そんな外側の基準を、私たちは日々の中で受け取っています。
そして、それを何度も繰り返し経験しているうちに、
「私は、こうするべきだ」
という自分自身のルールになっていくことがあります。
例えば、
「大人は感情的にならないもの」
という「普通」を聞いて育つと、
「私は、感情を見せてはいけない」
という「べき」に変わるかもしれません。
「仕事は長く続けるもの」
という価値観から、
「私は、簡単に仕事を辞めるべきではない」
というルールができることもあります。
つまり、「普通」は外側にある基準。
「べき」は、その基準が自分の内側に入り込んだもの、と考えることもできます。
「べき」は、自分を支えることもある
だからといって、「べき」という考えそのものが悪いわけではありません。
約束を守る。
人に配慮する。
仕事を最後まで責任を持って行う。
困っている人に手を差し伸べる。
こうしたことを大切にするのは、自分の価値観として、とても自然なことです。
問題は、
「私は、これを大切にしたい」
ではなく、
「こうしなければ、私はダメだ」
になってしまったときです。
同じ「頑張る」という行動でも、
「自分がやりたいから頑張る」
のと、
「頑張れない自分には価値がないから頑張る」
のでは、心にかかる負担がまったく違います。
「べき」という言葉の奥に、どんな気持ちがあるのか。
そこを見ることが大切なのです。
「こうしたい」と「こうしなければ」は違う
例えば、
「仕事を頑張りたい」
という気持ちがあるとします。
これは、「こうしたい」という自分の意思です。
一方、
「仕事は頑張るべき」
となると、少し違ってきます。
頑張れない日があったとき、
「今日は休もう」
ではなく、
「こんなことではダメだ」
と、自分を責める材料になってしまうからです。
「家族を大切にしたい」
も、本来は温かい気持ちです。
でも、
「家族を優先するべき」
になった瞬間、自分の予定や気持ちを後回しにすることが当たり前になってしまうかもしれません。
「こうしたい」と「こうしなければ」は、似ているようで違います。
前者には、自分の意思があります。
後者には、義務や強制が入り込んでいることがあります。
「べき」が増えるほど、できなかった自分を責めてしまう
「こうあるべき」というルールをたくさん持っている人ほど、自分に厳しくなりやすいものです。
朝からきちんと家事をするべき。
仕事では常に成果を出すべき。
人には笑顔で接するべき。
健康管理もしっかりするべき。
勉強も続けるべき。
家族のことも大切にするべき。
自分の時間も充実させるべき。
こうして並べてみると、かなり大変です。
しかも、これらを全部できなかった日は、
「今日もできなかった」
「私は意志が弱い」
「もっと頑張らなければ」
と、自分を責めてしまう。
でも、そもそも最初から「全部できる自分」を基準にしていたとしたら、苦しくなるのは当然です。
自分を責める前に、
「私は、自分に何を求めすぎているんだろう」
と考えてみる必要があります。
「べき」の中には、誰かの声が隠れている
もう一つ、見てほしいことがあります。
あなたが「こうあるべき」と思っていることは、本当に自分自身が決めたものでしょうか。
「女の人は家庭を大切にするべき」
「男の人は弱音を吐くべきではない」
「いい子なら親の期待に応えるべき」
「社会人なら、簡単に仕事を辞めるべきではない」
「年齢を重ねたら、落ち着いているべき」
こうした考えの中には、親や先生、会社、社会、過去に関わった人たちから受け取った言葉が含まれていることがあります。
子どもの頃に繰り返し聞いた言葉が、大人になってからも自分の中で続いていることもあります。
「ちゃんとしなさい」
「我慢しなさい」
「人に迷惑をかけないように」
「そんなことでは恥ずかしい」
当時は、自分を守るために必要だった言葉かもしれません。
でも、今の自分にも同じルールが必要とは限りません。
昔の自分を守ったルールが、今の自分を苦しめることもある
例えば、子どもの頃に「人に迷惑をかけてはいけない」と強く教えられた人は、大人になってからも、人に頼ることが苦手かもしれません。
困っていても、
「自分で何とかしなければ」
と思ってしまう。
疲れていても、
「こんなことで弱音を吐いてはいけない」
と我慢してしまう。
本当は助けてほしいのに、
「人に迷惑をかけるくらいなら、自分が我慢すればいい」
と考えてしまう。
でも、大人になった今は、誰かに助けを求めることも一つの選択です。
すべてを自分一人で抱える必要はありません。
過去の自分を守ってくれたルールが、今の自分には必要なくなっていることもあるのです。
「べき」を「選びたい」に変えてみる
では、どうすれば「べき」に縛られなくなるのでしょう。
まずは、頭の中にある「べき」を見つけることです。
「私は、もっと頑張るべき」
と思ったら、
「本当に、今の私にもっと頑張る必要がある?」
と問いかけてみる。
「人に頼るべきではない」
と思ったら、
「私は、本当に一人でやりたい?」
と聞いてみる。
「仕事は続けるべき」
と思ったら、
「私は、この仕事をこれからも続けたい?」
と考えてみる。
そして、
「〜するべき」
を、
「私は、〜したい」
に置き換えてみます。
もし「したい」に変わらないのであれば、その行動は今の自分にとって本当に必要なのかもしれません。
反対に、
「やっぱり私は、これを大切にしたい」
と思えるなら、それはもう「べき」ではなく、自分自身の意思として選び直すことができます。
「やらない」という選択も、自分を大切にすること
真面目な人ほど、
「やらない」という選択に罪悪感を持つことがあります。
休む。
断る。
頼る。
距離を置く。
やめる。
後回しにする。
これらは、一見すると「逃げ」のように感じるかもしれません。
でも、必要なことを見極めたうえで「今はやらない」と決めることも、自分の人生を選択する一つの方法です。
何でも頑張ることが、自分を大切にすることではありません。
何を頑張り、何を手放すのか。
その選択を自分でできることが、大切なのです。
「べき」をなくすのではなく、選び直す
ここまで読んで、
「じゃあ、もう何も頑張らなくていいの?」
と思う人もいるかもしれません。
もちろん、そういうことではありません。
大切なのは、「べき」を全部なくすことではありません。
自分の中にあるルールを、一度見直してみることです。
「私は、なぜこれをしなければならないと思っているんだろう」
「これは、誰のためのルールなんだろう」
「今の私にも必要なのかな」
そうやって確認してみる。
そのうえで、
「私は、これを大切にしたい」
と自分で選べるなら、それはもう誰かに押しつけられた「べき」ではありません。
自分の価値観として、大切にしていけばいいのです。
あなたの「べき」は、誰の声?
最後に、自分の中にある「べき」を三つほど探してみてください。
「私は、○○するべき」
「私は、○○であるべき」
「○○してはいけない」
そんな言葉があれば、書き出してみましょう。
そして、一つずつ問いかけてみます。
「それは、本当に私が望んでいること?」
「誰から教わった考え?」
「今の私にも必要?」
「できなかったとしても、私は自分を責める必要がある?」
「『こうしたい』に置き換えたら、どうなる?」
思い込みは、気づいた瞬間に消えるものではありません。
でも、
「これは本当に私の考えなのかな」
と気づくことができれば、そのルールとの付き合い方を選べるようになります。
「こうあるべき」に従う人生から、
「私は、こうしたい」と選ぶ人生へ。
その小さな違いが、心の自由を取り戻すきっかけになるかもしれません。
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