【思い込みのからくり】第6回:失敗してはいけない、が一歩を踏み出せなくする

【思い込みのからくり】第6回:失敗してはいけない、が一歩を踏み出せなくする
新しいことを始めたいと思っているのに、なかなか行動に移せない。
やってみたいことがあるのに、「もし失敗したらどうしよう」と考えてしまう。
そんな経験はありませんか。
失敗したくないと思うのは、決して悪いことではありません。できることなら、うまく進めたいですし、努力したことが良い結果につながってほしいものです。
けれども、失敗を避けることが何よりも大切になってしまうと、私たちは本来できるはずの選択まで手放してしまうことがあります。
今回のテーマは、「失敗してはいけない」という思い込みです。
「失敗してはいけない」とは、どんな考え方でしょう
「失敗してはいけない」という思い込みは、失敗そのものを避けたいという気持ちだけではありません。
その奥には、「失敗したら、自分の価値が下がってしまう」「周りから能力がないと思われる」「一度間違えたら、もう取り返しがつかない」といった考えが隠れていることがあります。
たとえば、仕事で新しい提案をしてみたいと思っても、「もし反対されたら恥ずかしい」と考えて発言を控える。
新しい勉強を始めたいと思っても、「今さら始めても遅い」「途中で続かなくなったら意味がない」と考えて、申し込むことを先延ばしにする。
人間関係でも、自分の気持ちを伝えたら相手との関係が悪くなるかもしれないと考え、本音を飲み込んでしまうことがあります。
このようなとき、私たちの目の前にあるのは、実際に起きた失敗ではありません。まだ起きていない未来を想像し、その可能性を避けようとしている状態です。
もちろん、先を考えることは大切です。しかし、失敗する可能性があるという理由だけで行動を止めてしまうと、挑戦する機会そのものが失われてしまいます。
失敗を避けることで、安心を守ろうとしている
なぜ私たちは、失敗をそれほど恐れるのでしょうか。
その理由のひとつは、失敗を避けることで、自分の心を守ろうとしているからです。
過去に失敗して誰かに責められた経験がある人は、同じような状況を避けようとするかもしれません。
一生懸命に取り組んだのに結果が出なかった人は、もう一度傷つくことを恐れて、新しい挑戦に慎重になることもあるでしょう。
人前で恥ずかしい思いをした経験があれば、目立つことや自分の意見を伝えることに抵抗を感じるかもしれません。
こうした反応は、自分を守るために身についたものとも考えられます。
つまり、「失敗してはいけない」という思い込みは、いつも自分を苦しめるために生まれたわけではありません。以前の自分にとっては、必要な考え方だった可能性もあるのです。
ただし、過去に必要だった守り方が、今の自分にも必要とは限りません。
かつて失敗から身を守るために選んだ行動が、現在の自分の可能性まで制限していないか、一度立ち止まって考えてみることが大切です。
完璧を目指すほど、動けなくなることがある
「失敗してはいけない」という思い込みは、完璧を求める気持ちとも結びつきやすいものです。
どうせやるなら、きちんとやりたい。
人に見せるなら、納得できるものにしたい。
中途半端な結果になるくらいなら、もっと準備をしてから始めたい。
こうした気持ちは、仕事の質を高めたり、丁寧に物事を進めたりする力にもなります。
けれども、完璧でなければ始めてはいけないと思うと、行動するための条件がどんどん増えていきます。
知識が十分に身についてから。自信が持てるようになってから。失敗しない方法がわかってから。
そうして準備を続けているうちに、いつまでも最初の一歩を踏み出せなくなってしまうのです。
ここで考えたいのは、完璧にできることと、始めることは別だということです。
最初から上手にできなくても、経験を重ねることで少しずつ身についていくことがあります。実際にやってみたからこそ、初めてわかることもあります。
準備を整えることは大切ですが、準備が完了する日を待ち続けることが、本当に自分の望む未来につながっているのか。それを問い直してみてもよいのではないでしょうか。
失敗と、自分の価値を結びつけていませんか
失敗を恐れる気持ちが強いとき、私たちは、物事がうまくいかなかったことと、自分自身の価値を結びつけてしまうことがあります。
仕事でミスをしたから、自分は能力がない。
人間関係がうまくいかなかったから、自分には魅力がない。
目標を達成できなかったから、自分は努力が足りない人間だ。
けれども、ひとつの出来事が、あなたのすべてを表しているわけではありません。
仕事でミスをしたことと、仕事ができない人間であることは同じではありません。誰かとうまくいかなかったことと、人としての魅力がないことも同じではありません。
結果には、そのときの状況や相手との相性、経験の差、環境など、さまざまな要素が関わっています。
もちろん、自分の行動を振り返り、改善すべきところがあれば見直すことも大切です。
しかし、反省することと、自分を否定することは違います。
「何がいけなかったのだろう」と考えることは、次に生かすための振り返りです。
一方で、「やっぱり自分はダメだ」と結論づけてしまえば、そこから学べることまで見えにくくなってしまいます。
うまくいかなかった経験があっても、あなた自身の価値まで失われるわけではありません。
失敗は、終わりではなく、情報になる
失敗をすると、私たちはつい「間違えてしまった」と考えます。
けれども、別の見方をすれば、失敗は「この方法では、思ったような結果にならなかった」という情報でもあります。
仕事の進め方を変えたほうがよいのかもしれません。相手への伝え方を工夫する必要があるのかもしれません。準備が足りなかったのかもしれませんし、そもそも目指す方向を見直したほうがよい場合もあるでしょう。
結果が思うようにならなかったからこそ、見えてくることがあります。
もちろん、すべての失敗がすぐに良い経験になるわけではありません。傷つくこともありますし、時間やお金を失うこともあります。無理に「失敗してよかった」と考える必要はありません。
大切なのは、失敗を美化することではなく、失敗した自分を必要以上に責めず、その経験から何を受け取れるかを考えることです。
うまくいかなかったときには、こんな問いかけをしてみてください。
「今回の経験から、何がわかっただろう」
「次に同じことをするとしたら、何を変えたいだろう」
「今回の結果だけで、すべてを判断していないだろうか」
問いかけが変わると、失敗に対する見方も少しずつ変わっていきます。
大切なのは、失敗しないことより、選び直せること
人生には、自分では結果をコントロールできないこともあります。
どれだけ準備をしても、思いどおりにならないことがあります。誠実に向き合っても、相手に気持ちが伝わらないこともあります。
だからこそ、失敗を完全になくそうとするよりも、うまくいかなかったときに、どう考え、どう行動するかが大切なのではないでしょうか。
一度の選択ですべてが決まるとは限りません。
進んでみて違うと感じたら、方向を変えてもいい。やってみて難しいとわかったら、方法を変えてもいい。今の自分には合わないと感じたら、いったん立ち止まってもいいのです。
もちろん、選択によっては簡単にやり直せないこともあります。だからこそ、必要な情報を集め、リスクを考え、慎重に判断することも大切です。
それでも、慎重に考えることと、恐れから何も選べなくなることは違います。
「失敗しない道を選ばなければ」と考えるのではなく、「自分で考えて選び、その結果から学んでいこう」と考えてみる。
そうすることで、未来は、間違えてはいけないものから、自分で育てていけるものへと変わっていきます。
「失敗してはいけない」を「まずは試してみよう」に変える
もし今、やってみたいことがあるのに、失敗への不安から動けずにいるのなら、いきなり大きな一歩を踏み出す必要はありません。
まずは、小さく試してみることから始めてみましょう。
新しい仕事に挑戦したいなら、必要な情報をひとつ調べてみる。
自分の意見を伝えたいなら、安心できる相手に短い言葉で話してみる。
勉強を始めたいなら、まずは一冊の本を手に取ってみる。
小さな行動であれば、結果を確かめながら、次の選択を考えることができます。
ここで大切なのは、必ず成功させることではありません。自分が何を感じ、何がわかり、次にどうしたいと思うのかを知ることです。
そして、うまくできなかったときには、「やっぱりダメだった」と決めつけるのではなく、「今回はここまでできた」「次はこうしてみよう」と考えてみてください。
失敗を恐れなくなるまで待つのではなく、恐れがある自分のまま、小さく動いてみる。
その積み重ねが、少しずつ自信を育ててくれます。
あなたは、何を失敗だと思っていますか
ここで、少しだけ自分に問いかけてみてください。
あなたが「失敗してはいけない」と感じるのは、どんなときでしょうか。
失敗したら、誰かにどう思われると感じていますか。
その出来事が起きたとき、本当に取り返しがつかなくなるのでしょうか。それとも、そうなるかもしれないと想像しているのでしょうか。
そして、もし失敗したとしても、自分を責める以外にできることがあるとしたら、何があるでしょうか。
すぐに答えが出なくても大丈夫です。
自分が何を恐れているのかに気づくことは、思い込みを見直すための大切な一歩です。
「失敗してはいけない」という考えに気づいたら、次は「失敗しても、そこから考え直すことはできる」と、自分に新しい選択肢を渡してみましょう。
失敗しない人生を目指す必要はありません。
自分で選び、経験し、必要なら方向を変えながら、自分らしい未来をつくっていけばいいのです。
失敗を避けるために、あなたの可能性まで閉じ込めてしまわないように。
今日のあなたが踏み出せる、小さな一歩を大切にしてみてください。
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