【思い込みのからくり】第7回:自信がついてから、ではいつまでも始められない

新しいことに挑戦したい。
今の自分を変えたい。
やってみたいことはあるのに、なかなか行動に移せない。
そんなとき、「もっと自信がついてから始めよう」と考えたことはありませんか。
もう少し知識を身につけてから。失敗しないと確信できてから。自分ならできると思えるようになってから。
そう考えているうちに、いつの間にか時間だけが過ぎてしまうことがあります。
そして、なかなか行動できない自分を見て、「やっぱり私は自信がない人間なんだ」と、さらに自信を失ってしまうこともあるでしょう。
今回のテーマは、「自信がついてからでなければ始められない」という思い込みです。
自信がある人は、最初から迷わないのでしょうか
私たちは、自信がある人を見ると、「あの人はもともと自信がある人なんだろうな」と感じることがあります。
人前で堂々と話す人。新しい仕事に積極的に挑戦する人。自分の考えをはっきり伝えられる人。
そうした姿を見ていると、自分とは違う特別なものを持っているように思えるかもしれません。
けれども、その人も最初から自信に満ちあふれていたとは限りません。
人前で話すことが苦手だった時期があるかもしれませんし、初めての仕事に不安を感じたこともあるでしょう。失敗したり、思うような結果が出なかったりしながら、少しずつ経験を積み重ねてきたのかもしれません。
私たちが目にしているのは、積み重ねた経験の先にある姿であって、その人が歩いてきた過程のすべてではないのです。
自信があるから行動できる場合もあります。しかし、行動して経験を重ねたからこそ、自信が育っていく場合もあります。
この順番を見落としてしまうと、「自信がない私は、まだ始める資格がない」と考えてしまうのです。
でも、本当にそうでしょうか。
「できると思えること」と「できるようになること」は違う
自信がないとき、私たちは「自分にできるだろうか」と考えます。
できるかどうかわからないから、始めるのが怖い。
失敗するかもしれないから、もう少し準備したい。
そう考えるのは自然なことです。
ただ、ここでひとつ考えてみたいことがあります。
それは、実際に経験してみなければわからないことが、世の中にはたくさんあるということです。
たとえば、新しい仕事に興味があっても、経験がないから自分に向いているかわからない。勉強を始めたいと思っても、続けられるかどうかわからない。人との交流を広げたいと思っても、自分がうまく関われるか不安になる。
こうしたことは、頭の中でいくら考えても、すべての答えが出るわけではありません。
実際に取り組んでみて初めて、自分に合っているとわかることもあれば、想像していたより難しいと気づくこともあります。
そして、難しいと感じたからといって、それが必ずしも「自分には向いていない」という意味になるわけでもありません。経験が足りないだけかもしれませんし、方法を変えれば取り組みやすくなるかもしれません。
「できると思えたら始める」のではなく、「できるかどうかを知るために、小さく始めてみる」。
そんな考え方もあってよいのではないでしょうか。
自信がない自分を、変えてから動こうとしていませんか
「もっと自信を持てるようになりたい」
そう思うこと自体は、悪いことではありません。
けれども、自信のない自分を変えることが、行動するための絶対条件になってしまうと、いつまでも始められなくなることがあります。
自信がないから、人前で話せない。
自信がないから、自分の作品を発表できない。
自信がないから、新しい仕事に応募できない。
自信がないから、自分の気持ちを伝えられない。
このように考えていると、自信がない自分を克服しなければ、何もできないように感じてしまいます。
でも、自信がないままでも、できることはあります。
緊張しながらでも、一言だけ自分の意見を伝えることはできます。まだ不安があっても、興味のある分野について調べることはできます。自分の実力に確信が持てなくても、今の自分にできる範囲で挑戦することはできます。
自信がないことと、何もできないことは同じではありません。
不安を感じる自分を否定したり、無理に前向きになろうとしたりしなくても大丈夫です。
「今の私は自信がない。それでも、できることは何だろう」
そう問いかけてみると、今まで見えなかった選択肢が見つかるかもしれません。
小さな成功体験が、自信を育てていく
では、自信はどのように育っていくのでしょうか。
そのひとつが、小さな経験を積み重ねることです。
ここで大切なのは、最初から大きな成果を出そうとしないことです。
たとえば、人前で話すことに苦手意識があるなら、いきなり大勢の前で話そうとする必要はありません。まずは身近な人に自分の考えを伝えてみる。次に、少人数の場で発言してみる。少しずつ経験を広げていけばよいのです。
新しい勉強を始めたいなら、最初から資格取得や大きな目標を掲げるのではなく、まずは一日10分、学ぶ時間をつくってみる。
仕事で新しいことに挑戦したいなら、いきなり大きな決断をするのではなく、情報を集めたり、経験者の話を聞いたりするところから始めてもよいでしょう。
小さな行動でも、自分で決めて実行できたという経験は残ります。
そして、その経験が次の行動を支えてくれることがあります。
もちろん、挑戦したことがすぐに成功につながるとは限りません。思うように進まないこともあるでしょう。
それでも、「自分で考えて動いてみた」「わからないことをひとつ調べられた」「不安があっても一歩進めた」という事実は、あなたの経験として残ります。
自信とは、いつも迷わずにいられることではありません。
迷いながらでも、自分なりに考え、行動できた経験から育っていくものでもあるのです。
他人と比べると、自分の歩みが見えなくなる
自信を持てないとき、私たちは他人と自分を比べてしまいがちです。
同じ年齢なのに、あの人はもうあんなに活躍している。
自分より経験が少ないはずなのに、あの人は堂々としている。
周りの人はどんどん前に進んでいるのに、自分だけが取り残されている気がする。
そんなふうに感じると、自分の足りないところばかりが目につくようになります。
けれども、人それぞれ、経験も環境も得意なことも違います。歩いてきた道が違えば、身につけてきたものが違うのも自然なことです。
他人の現在と、自分の途中経過を比べてしまえば、自分の成長に気づきにくくなります。
比べるのであれば、少し前の自分と比べてみてください。
以前はできなかったことが、今は少しできるようになっていないでしょうか。
以前なら避けていたことに、今は興味を持てるようになっていないでしょうか。
大きな変化でなくてもかまいません。
自分では当たり前だと思っていることの中にも、経験を重ねたからこそできるようになったことがあるはずです。
他人と同じ速さで進む必要はありません。自分の歩みを、自分の基準で確かめていくことも大切なのです。
自信がないときこそ、自分への問いかけを変えてみる
「私にはできないかもしれない」
そんな思いが浮かんだとき、無理に「絶対にできる」と言い聞かせる必要はありません。
根拠のない前向きな言葉が、かえって苦しく感じられることもあるからです。
そんなときは、問いかけを少し変えてみましょう。
「本当にできないのだろうか。それとも、まだ経験がないだけだろうか」
「全部できなくても、今の自分にできることはないだろうか」
「失敗しないために準備することと、失敗を恐れて先延ばしにすることを混同していないだろうか」
問いかけを変えると、物事の見え方も変わっていきます。
自分を否定する答えを探すのではなく、今の自分にできる選択肢を探してみるのです。
そして、実際に行動するときには、結果だけで自分を評価しないことも大切です。
うまくいったかどうかだけではなく、何を学んだのか、どんなことに気づいたのか、次はどうしたいのかにも目を向けてみてください。
その積み重ねが、自分への信頼につながっていきます。
自信がつくのを待つのではなく、今の自分から始める
自信がついたら始めよう。
そう考えていることの中に、あなたが本当はやってみたいことが隠れていませんか。
いつか挑戦したい仕事。学んでみたいこと。伝えたい思い。新しく築いてみたい人間関係。
それらを、今すぐすべて実現する必要はありません。
大きな目標を掲げることが、いつも正解というわけでもありません。
まずは、自分が何に興味を持っているのかを確かめてみる。できる範囲で情報を集めてみる。小さな行動をひとつ試してみる。
それだけでも、昨日までとは違う経験が生まれます。
もちろん、健康や安全、お金、仕事など、慎重な判断が必要な場面では、十分に準備をすることも大切です。自信をつけるために、無理をして行動する必要はありません。
大切なのは、自信がないという理由だけで、自分の可能性を最初から閉ざさないことです。
自信があるから始められることもあれば、始めたからこそ自信が育つこともあります。
どちらか一方だけが正しいわけではありません。
もし今、心の中に「やってみたい」という気持ちがあるのなら、その気持ちを大切にしてみてください。
自信が十分にあるかどうかではなく、今の自分にできることは何かを考えてみるのです。
あなたは、何を待っていますか
最後に、少しだけ自分に問いかけてみてください。
あなたが「自信がついてから」と考えていることは何でしょうか。
その自信は、どんな状態になれば身についたと感じられるのでしょうか。
そして、自信が十分でなくても、今の自分にできる小さな一歩があるとしたら、それは何でしょうか。
すぐに答えが出なくても大丈夫です。
自分が何を待っているのかに気づくことも、思い込みを見直すための大切な一歩です。
自信がない自分を、無理に変えてから進む必要はありません。
不安があっても、迷いがあっても、今の自分にできることから始めてみる。
その経験が、少しずつ自分への信頼を育ててくれるかもしれません。
自信は、何かを始めるための入場券ではありません。
歩きながら育てていくこともできるものです。
完璧な自分になる日を待つのではなく、今の自分と一緒に、一歩ずつ進んでいきましょう。
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