【思い込みのからくり】第12回:変わりたいのに変われない、と思い込んでいる

思い込みのからくり|第12回
変わりたいのに変われない、と思い込んでいる
「今の自分を変えたい」
そう思っているのに、気づけばいつもと同じ毎日を過ごしている。
人間関係を変えたいと思いながら、相手に合わせてばかりいる。
新しいことを始めたいと思いながら、失敗を恐れて先延ばしにしてしまう。
自分をもっと大切にしたいと思いながら、結局、周りの期待を優先してしまう。
そんな経験はありませんか?
変わりたい気持ちは、確かにある。
今のままではいけないと感じている。
それなのに、行動が変わらない。
そして、そんな自分に対して、また同じ言葉をかけてしまうのです。
「私は意志が弱いから」
「何をやっても続かない」
「どうせ、私には変われない」
けれど、本当にそうなのでしょうか。
もしかすると、あなたが変われないのではなく、変わろうとする自分の中に、まだ気づいていない思い込みがあるのかもしれません。
変わりたいのに、変わることが怖い
私たちは、今の状況に不満があっても、慣れ親しんだ環境や行動を簡単には手放せないことがあります。
なぜなら、人は変化によって得られるものだけでなく、変化によって失うかもしれないものにも意識を向けるからです。
例えば、人間関係に悩んでいて、本当はもっと自分の意見を伝えたいと思っている人がいるとします。
けれど、自分の意見を伝えたら、相手に嫌われるかもしれない。
今までの関係が壊れてしまうかもしれない。
わがままな人だと思われるかもしれない。
そんな不安が浮かんでくると、結局、これまでどおり相手に合わせることを選んでしまいます。
頭では「変わりたい」と思っていても、心のどこかでは「今のままのほうが安全だ」と感じているのです。
これは、決して珍しいことではありません。
変化には、未知のものが含まれています。どんな結果になるのか、周りがどう反応するのか、自分が本当にうまくやれるのか。確かな答えがないからこそ、不安になるのです。
そして、慣れた行動には、たとえ不満があったとしても、ある程度の予測ができるという安心感があります。
つまり、変わりたい気持ちと、変わりたくない気持ちが、心の中に同時に存在していることがあるのです。
大切なのは、変われない自分を責めることではありません。
自分は何を変えたいと思っているのか。そして、変わることによって何を失うのが怖いのか。
その両方を理解することから始めてみましょう。
「今の自分には無理」という思い込み
変化を妨げるもう一つの要因は、自分自身に対する決めつけです。
「私は昔からこういう性格だから」
「何をやっても三日坊主だから」
「人前で話すのが苦手だから、挑戦しても無理」
こうした言葉は、自分の特徴を説明しているようでいて、実は未来の行動まで制限してしまうことがあります。
例えば、これまで何かを始めても長続きしなかった人が、「私は続けられない人間だ」と思い込んでいるとします。
新しいことに興味を持っても、以前の経験を思い出し、「どうせまた途中でやめるだろう」と考えてしまう。
その結果、始める前から気持ちが萎えてしまったり、少しうまくいかないだけで「やっぱり自分には無理だ」と諦めてしまったりします。
けれど、過去に続かなかった経験があることと、これからも続けられないことは、同じではありません。
当時は、自分に合った方法を知らなかったのかもしれません。
目標が大きすぎたのかもしれません。
仕事や家庭の事情で、余裕がなかったのかもしれません。
うまくいかなかった理由は、一つではないはずです。
それなのに、過去の結果だけを根拠に「自分はこういう人間だ」と決めてしまうと、今の自分に合った新しい方法を試す機会まで失ってしまいます。
過去の自分を理解することは大切です。
でも、過去の自分だけを基準に、これからの自分まで決めなくてもよいのです。
変化は、いつも大きな決断から始まるわけではない
「変わりたい」と思うと、私たちはつい、大きな変化を想像してしまいます。
仕事を辞める。
住む場所を変える。
付き合う人を変える。
今までとはまったく違う生き方を始める。
もちろん、人生の転機には、思い切った決断が必要になることもあるでしょう。
けれど、すべての変化が、大きな決断から始まるわけではありません。
むしろ、日常の中にある小さな選択を変えることが、未来を変えるきっかけになることもあります。
いつもなら我慢する場面で、自分の希望を一つ伝えてみる。
頼まれたことをすぐに引き受けるのではなく、「少し考えてから返事をします」と言ってみる。
興味があることについて、まずは十分だけ調べてみる。
疲れているときに、無理をするのではなく、休むことを選んでみる。
どれも、人生を一変させるような行動ではありません。
けれど、これまで当たり前のように繰り返してきた行動を少し変えることは、自分の中に新しい選択肢をつくることにつながります。
大切なのは、最初から完璧に変わろうとしないことです。
一度の行動で、すべてが変わらなくても構いません。
小さな行動を試し、その結果を見て、必要ならやり方を変えていく。
その繰り返しの中で、自分に合った変化の形が見つかっていくのです。
変われなかった日があっても、振り出しに戻ったわけではない
新しい行動を始めても、毎日続けられるとは限りません。
せっかく自分の意見を伝えられたのに、次の日にはまた相手に合わせてしまうこともあるでしょう。
生活を整えようと決めたのに、忙しさに追われて、いつもの習慣に戻ってしまうこともあるかもしれません。
そんなとき、「やっぱり私は変われない」と結論づけてしまうのは、少し早いのです。
変化は、一直線に進むとは限りません。
新しい行動ができる日もあれば、以前の行動に戻る日もあります。
大切なのは、一度も元に戻らないことではなく、戻ったときに、もう一度選び直せることです。
以前なら何も考えずに我慢していた場面で、「本当は嫌だった」と気づけたのなら、それも一つの変化です。
以前なら自分を責めて終わっていた失敗を、「次はどうすればいいだろう」と考えられたのなら、それも前進です。
行動だけでなく、自分の気持ちへの気づき方や、物事の受け止め方が変わることも、大切な成長なのです。
変化を急ぐあまり、できなかったことばかりを数えていませんか?
ときには、できるようになったことや、以前とは違う考え方ができたことにも目を向けてみてください。
自分の変化を認めることは、次の一歩を踏み出す力にもつながります。
自分を変える前に、思い込みを見直してみる
ここまで読んで、「それでも、やっぱり自分を変えるのは難しい」と感じた方もいるかもしれません。
そんなときは、無理に自分を変えようとする前に、心の中にある思い込みを見直してみましょう。
例えば、こんな問いかけです。
「変わるためには、完璧にできなければならないと思っていないだろうか?」
「周りの人に理解してもらえなければ、変わってはいけないと思っていないだろうか?」
「一度失敗したら、もう挑戦する資格がないと思っていないだろうか?」
「今までの自分と違う行動をしたら、自分らしくなくなると思っていないだろうか?」
私たちは、気づかないうちに、変化に対する条件を自分でつくっていることがあります。
自信がついてから。
時間に余裕ができてから。
周りの人に認められてから。
失敗しないと確信できてから。
そうした条件がすべてそろうのを待っていたら、なかなか始められないこともあるでしょう。
もちろん、準備や慎重な判断が必要な場面もあります。無理に変化を起こす必要はありません。
ただ、「本当にそこまでの条件が必要なのだろうか」と、一度考えてみることはできます。
自分に課している条件を少し緩めるだけで、今まで難しいと思っていたことが、意外と身近なものに感じられるかもしれません。
あなたは、どんな自分になりたいですか?
変わりたいと思ったとき、私たちは「今の自分の何がダメなのか」と考えがちです。
もっと社交的にならなければ。
もっと自信を持たなければ。
もっと努力しなければ。
けれど、自分の足りないところを探すだけでは、変わること自体が苦しいものになってしまいます。
そこで、少し視点を変えてみましょう。
「私は、どんな自分になりたいのだろう?」
「どんな毎日を過ごせたら、今より心地よいだろう?」
「何ができるようになったら、自分をもっと大切にできるだろう?」
誰かのようになる必要はありません。
周りから評価される自分を目指さなくても構いません。
あなた自身が、今より少し心地よく、自分らしく生きられること。それも、立派な変化の目標です。
変わることは、今の自分を否定することではありません。
今の自分を理解したうえで、これからの自分に合う選択を増やしていくことです。
できない自分を責めるのではなく、できるようになるための方法を探してみる。
失敗した自分を否定するのではなく、そこから何を学べるかを考えてみる。
そして、どんなに小さな一歩でも、自分で選んで行動できたことを認めてあげる。
その積み重ねが、少しずつ未来を変えていくのではないでしょうか。
最後に
「変わりたいのに変われない」と感じているとき、必要なのは、もっと強い意志や厳しい努力だけではないのかもしれません。
自分を変えようとする前に、自分を止めている思い込みに気づくこと。
変化を怖いと感じる自分を否定せず、何が不安なのかを理解すること。
そして、大きな変化を求めすぎず、今できる小さな行動から始めてみること。
それだけでも、これまでとは違う道が見えてくることがあります。
あなたは、今まで一度も変われなかったわけではありません。
環境が変わったとき、出会う人が変わったとき、経験を重ねたとき、考え方や行動が少しずつ変わってきたこともあるはずです。
今のあなたも、これから変わっていく可能性を持っています。
過去の自分がそうだったからといって、未来の自分まで同じである必要はありません。
「私は変われない」という思い込みを、少しだけ脇に置いてみましょう。
そして、今日できる小さな一歩を、自分の意思で選んでみてください。
変化は、誰かに認められたときに始まるものでも、完璧な自信がついたときにだけ起こるものでもありません。
自分の気持ちに気づき、選び直そうとしたその瞬間から、すでに始まっているのかもしれません。
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